平成21年度は、現在進行中の研究のもととなっている質的手法を用いた「英語力上位学習者から得られた辞書使用方略」が学会論文誌(査読付き)に掲載され、その成果を公表することができた。電子辞書を扱った研究論文は極めてその数が少なく、我が国の英語教育界に寄与するところが大きいと考えられる。 また、前年度に行った2つ目の実証研究から得られた知見(教授する辞書使用方略を一つに絞ってその有効性を明示し、かつ、授業外のタスクと復習テストと連携して教授したが、予想したほどには教授した方略は定着しなかった。但し、辞書の使用方略を指導したことが、結果的に読解力の向上に寄与したと考えられた)を、外国語教育メディア学会(LET)全国大会(8月に流通科学大学で開催)とGLoCALL2009(12月にタイのチェンマイで開催)で公表した。同時に、辞書を利用した外国語教育の先行知見とともにその内容を学内紀要に論文としてまとめ、3月に東洋大学で開催された大学英語教育学会(JACET)の英語の辞書研究会のワークショップで発表を行った。 以上のように、今年度は、新たなデータを収集することよりも今までの実験結果をまとめて公表することで、今後の辞書使用の方略指導のあり方について計画を練り直すことができた。次年度は、学習者により明示的に方略を教授するため、語彙習得を目的に辞書使用の方略指導を行う予定である。21年度に実施予定であった質的手法を用いた学習者の辞書検索行動の分析については、現在、進行中であり、22年度中に収集したデータを公表する予定である。 なお、9月には、本研究課題の基礎データとなっている知見(電子辞書と印刷辞書を検索語彙の定着度から比較)を、Eurocall 2009(9月にスペインのガンディアで開催)で発表をおこなった。このように欧州や、前年度に引き続き東南アジアで研究成果を発表することで、我が国での電子辞書の普及率を公表することができた。
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