本研究では小学生がどのようにして英語の語彙力を発達させていくのかを検証した。具体的には語彙能力の発達と音韻認識能力、アルファベット知識、および母語発達との関連に注目し、それらの能力を測定して関連性や予測性などを調査した。また研究から得られた知見を基にカリキュラムを作成し、それに基づき実際に小学校5年生を対象に授業を行った。授業ではアルファベットの文字指導また音韻認識能力を高める活動を積極的に行った。その結果、音韻認識能力がその後の語彙発達に影響を与えていたことが分かった。これは英語圏で言われている単語のスペルの発達には音韻認識能力を育てることは不可欠であるという理論を実証したものと解釈できる。子ども達の持つ英語の音に対する認識(phonological awareness)が、語彙力、およびリーディング力を伸ばす上で重要になってくることが共分散構造分析でも明らかになった。また語彙力については単語の音、つづり、そして意味の理解がどのように発達していくのかをそれぞれ異なるテストで検証した。その結果、本研究の参加者のような初期学習者にとっては、スペルから語の意味が理解できる力(receptive knowledge/decoding)が彼らの語彙力全体を最もよく説明すると考えられる。また、英語能力を示す変数と他の教科とは、統計的にみて有意の相関を示す数値が見られた。特に国語と漢字との相関が高かった。 また質的な研究として、子ども達の英語学習への動機や授業活動に対する意見を聞いたが、それらのアンケート項目は音韻認識能力に若干の関連性を持つものの、他の語彙や音、またリーディング能力を測るテストとはなんら相関性は示さなかった。中でも授業活動に関して「楽しさ」を4段階で評価してもらったが、それらの結果は英語能力を測定したテストとは全く相関が見つからなかった。
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