研究概要 |
■日英バイリンガル児の英語発話の複雑化を分析し,次の結果が得られた。(1)1語文・2語文の発話:目的語や前置詞句を落としてインプット文を使用したり,文末の動詞のみを使用したりした。 目的語等を伴っていた2語文は未分析のチャンクであった。(2)発話内の語数の増加の要因:(a)インプットを反復できる語数の増加,(b)場面と結びついたチャンクの使用,(c)単語の入れ替えや追加,があげられる。(c)については,2;5頃から,名詞を入れ替える発話を始め,「枠(名詞)+軸(動詞)+枠(名詞)」等の型を獲得し始めた。主語の入れ替えは,身近な人物の行動の描写,絵本内の動物を描写,自分が同じ動作を行い描写することへ進行した。目的語は,対象児が頻繁に使う動詞から他の動詞へ拡張した。(3)誤用:意味的な過拡張の誤用が見られたが,基本的な語順の誤りは少なかった。これらは,発話に与えるインプット,及びチャンクの模倣の影響を示している。 ■3歳までの2児の,日英語間の切り替え能力の発達過程を分析し,(1)〜(6)の結果が得られた。(1)使い分けは2児とも2歳以降に始め,2歳6ヶ月までには多くおこなうようになったが,その開始年齢は第二子のほうが早く個人差が見られた。(2)使い分けの開始時の言語発達段階では,第一子が1語文段階で第二子が2語文段階という個人差が見られた。(3)2児とも,使い分け行動の前に同等表現の使用が数ヶ月続いた。(4)2児とも,同等表現の使用は使い分け開始後も続いた。(5)2児とも,使用言語の誤りを自己修正する行動は,使い分けが始まった後に見られた。(6)2児とも,誤用と混用は3歳近くになるとわずかになった。これらは,個人差はあるものの,2〜3歳の間に2言語の使い分けが始まり,次第に正確さを増してゆくことを示している。
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