研究概要 |
4歳6ヶ月までの日本人幼児二名における疑問詞WhatとWhyを含む発話の発達を分析した。〈What are you Ving〉の発話に関して,第一子Zの発話例は3例のみで,すべて正しかった。これは父の多用した表現を定型表現として使用した結果であろう。一方,第二子Hは語順,追加,脱落,過剰使用と多様な誤りを犯した。語順と脱落の誤りはインプット文の不完全な習得が原因であろう。追加や過剰使用は,彼の中で確立した〈What are you Ving〉というスキーマを活用したために引き起こされたと考えられる。Hが活用したこのスキーマは,〈What are you Ving〉という具体的なもので,〈Wh-word+AUX+N+Ving〉という抽象的な規則ではなかった。Zの誤りは一つであるが総数も少ないので〈What's N Ving〉が確立しているか判断できないが,〈Wh-word+AUX+N+Ving〉という規則は確立していなかった。Hも同様に〈Wh-word+AUX+N+Ving〉を習得していないが,〈Why axe you Ving〉の誤りは少なかったので,〈Wh-word are you Ving〉が確立している可能性はある。〈Why is N Ving〉の習得の難しさは,WhyにWhat'sのような縮約形がないことや,定型表現として習得されるような高頻度な用例(usage)がなかったことが原因かもしれない。二児におけるWh疑問文の発達において,定型表現と具体的なスキーマの活用が見られたが,抽象的な規則の習得には至らなかった。
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