本研究の目的は、19世紀後半期英米圏の美術産業・美術教育が、アーネスト・F・フェノロサの思想形成において果たした役割を、日英米3国の文化交流史観点から考究・解明することである。科研費交付希望期間である3年間で実現を目指すのは、大きく分けて以下の3点である。1. 19世紀アメリカ美術教育に対するイギリスからの影響を跡づける一次資料の収集。2. 同上テーマに関する二次資料の追加的収集。3. 収集した資料の読解・分析を行い、そうした作業を通じて得られた新たな知見を、これまでの私のフェノロサ研究へと組み入れ、論文・学会発表の形でその成果を公表する。 研究開始時から平成21年3月にかけては、まず文献資料の検索・収集・分析を実施した。ウェブ上のデータベースをおもに利用して、本研究に有意な一次・二次資料を検索・一覧化した後、購入や所蔵機関へのコピー依頼、または所蔵機関からの借り出しとコピーを通じて収集し、並行して収集資料の読解・分析を進めた。そのうえで、上記の現地調査にて集めた資料を整理・分析していく作業が、現在まで進行中である。具体的には、収集資料の整理をアルバイト人員の手を借りつつ進め、あわせて資料の読解ならびに必要部分の翻訳作業に着手し、対象資料の時代的な背景分析と歴史的な位置づけ作業をおこなっている。また平成21年3月にはアメリカ合衆国において、日本では入手不能な一次・二次資料の調査・収集を実施した。業績としては、研究開始時から平成21年3月までに、本研究に関連する2本の論文を刊行した。
|