本研究は、東南アジア近世遺跡の調査成果と現地史料をもとに、17世紀における東アジア海交易・交流活動の様相と日本人のかかわり、また東南アジアに存在した「日本町」の活動とそのネットワークの実態を明らかにしようとするものである。そして、近世東アジア海におけるモノ・人・情報の交流と交易の様態の解明をめざしている。そのため、東南アジアの現地調査を重要な柱としており、平成20年度は17世紀に日本町の存在したベトナム・ホイアンにて調査を実施した。調査期間は2008年8月であり、ハノイ国家大学との共同チームを組織した。ホイアンにおいて申請者が発掘調査し、これまで17世紀の遺構や陶磁器資料などが出土している。今回は、2年前に検出した17世紀の遺構出土陶磁器の調査を実施した。具体的には、出土遺物の水洗い・注記・写真撮影・実測・分類などである。この調査では、17世紀後半の日本の肥前磁器や同・唐津焼きなどを確認した。唐津焼きの検出は、ベトナムの遺跡調査では初の出土であり、近世日本とのつながりを考えるうえで貴重な資料の検出であった。さらに、ガラス片や陶磁器に書かれた墨書など、これまでの調査では未検出の遺物も確認することができ、大きな成果をおさめた。これらの資料は今後、科学分析をすすめ、その来歴や文字の解読をすすめる予定である。文字の解読によっては、17世紀の交流・「日本町」の実態の一部が垣間見られる可能性があり、貴重な発見である。
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