本研究は、東南アジア近世遺跡の調査成果と現地史料をもとに、17世紀における東アジア海交易・交流活動の様相と日本人のかかわり、また東南アジアに存在した「日本町」の活動とそのネットワークの実態を明らかにしようとするものである。そして、近世東アジア海におけるモノ・人・情報の交流と交易の様態の解明をめざしている。そのため、東南アジアの現地調査を重要な柱としており、平成21年度は17世紀に日本町の存在したベトナム・ホイアンにて調査を実施した。調査期間は2009年8月であり、ハノイ国家大学との共同チームを組織した。ホイアンにおいて申請者が発掘調査し、これまで17世紀の遺構や陶磁器などが出土している。今回は、昨年度に引き続き、大量に出土した陶磁器類の整理をした。具体的には、出土遺物の水洗い・注記・写真撮影・実測・分類などである。それによって、17世紀から19世紀にいたるホイアンで使用された食器類の変遷が明確になってきた。つまり、食器類(陶磁器)の生産地別変遷の様相、時期別変遷の様相などである。こうした食器類の中に、日本の肥前陶磁器があり、近世東アジア海における日本とベトナムの交易の様相がみえてきた。さらに、その出土のあり方から、ベトナム・ホイアンが東アジア交易世界における重要な位置を占めていたことも明らかになりつつある。その意味で、陶磁器資料の持つ意味は大きく、重要な研究意義がある。 さらに、2009年8月の調査期間中、ホイアン国際シンポジウムがあり、歴史・考古分科会を組織し、日本・台湾・ベトナムの研究者・学生が参加し、研究交流を実施した。また、出土遺物を一同で観察し、意見交換を行うなど、調査の途中経過を外国人研究者に公開した。
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