古代日本列島の諸地域における漢字文化受容とその展開について、出土文字資料などにより地域的特性を探ること、中国から朝鮮半島を経由して受容された漢字文化がそれぞれの地域でどのような変容をとげているのか、を明らかにすることを研究の目的としている。 平成20年度は、(1)各地の漢字文化関係の出土文字資料などの資料収集に努めるとともに、(2)古代中国・朝鮮の漢字文化の把握、そして(3)これまでの研究整理を進あることに重点を置いた。(1)では、福島県・広島県・静岡県その他で出土文字資料の実物調査を行い、(2)では、韓国国立中央博物館・台湾中央研究院などで出土文字資料を調査し研究交流を行った。(3)では、学会などでの発表・講演において、これまでの研究を整理する内容の報告をとりまとめ、研究の進展を図った。研究成果の一部は、学会などでの発表・講演のほかに、愛媛大学法文学部『資料学の方法を探る』誌や栃木県立文書館『栃木県立文書館研究紀要』誌に論文として公表した。出土文字資料など新出の史料を用いることにより、古代の国家・貴族だけでなく、地方豪族や地方社会による漢字文化受容の具体相が明らかになってきつつあることは、列島古代の多元的な文化展開を展望する上で有意義と考える。なお、今年度集中的に収集した資料の分析作業を、次年度においてさらに進めたい。
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