平成22年度は、(1)各地の漢字文化関係の出土文字資料などの資料収集を進めるとともに、(2)金石文研究会を開催して日本古代の金石文の調査・研究を展閲して資料集成を行い、また(3)中国辺境出土の簡牘(木簡)など古代中国・朝鮮における漢字文化展開の把握を進め、そして(4)研究成果をとりまとめて報告書を刊行することに重点を置いた。(1)では、島根県その他で出土文字資料の実物調査を行い、(2)では金石文研究会を開催して日本古代金石文に関する調査・研究を進め、釈文検討の上にデータを集成した。(3)では、韓国東北アジア歴史財団主催の国際学術研究会に参加して報告を行ったほか、台湾中央研究院において中国西域出土の簡牘(木簡)の実物調査を行い、研究交流を行った。(4)では、学会などでの発表・講演において、これまでの研究を整理する内容の報告を行い、さらなる研究の進展を図った。研究成果の一部は、学会などでの発表・講演のほかに、編著書『史跡で読む日本の歴史4奈良の都と地方社会』・著書『木簡から読み解く平城京』や『武蔵野』誌などの論文として公表した。地方における漢字文化受容の具体相が明らかになることは、列島古代の多元的な文化展開を展望する上で有意義であったと考える。最後に、調査・収集した金石文についてのデータをふくめ、三年にわたる研究成果をとりまとめて発信するための報告書の作成に当たった。
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