東大寺図書館所蔵の燈油田関連史料について、同図書館の協力を得て、カラーマイクロからデジタルイメージ化した。同イメージは、史料の翻刻に活用するのみならず、分離文書復元のための不可欠の情報を提供するものである。 燈油田関係史料の原本調査のために連携研究者久留島典子教授・高橋敏子准教授(いずれも東京大学・史料編纂所)と東大寺図書館に赴き、文書の精査を行うと共に、現在分離している文書の復元確認を行った。 東大寺図書館以外に所蔵される燈油田関係史料の蒐集のために、京都市歴史資料館所蔵燈心文庫および国立歴史民俗博物館所蔵水木家史料の調査・撮影を行った。両者ともに学界未紹介の東大寺関係史料の存在を確認した。 上記の調査対象以外についても、東京大学史料編纂所所蔵の影写本などからデータ抽出作業を行った。平成21年度以降の研究の基礎となる基本データのかなりの部分を押さえることができた。 なお代表者遠藤は、「大部荘関連文書のアーカイブ論」(2008.8、於米国南カリフォルニア大学漢文ワークショップ)の講演を行った。これは、燈油田関連史料と密接に関わる油倉の文書管理を論じたものである。また連携研究者である西尾知己助手(早稲田大学)は、「中世後期の東大寺大仏殿と興福寺・奈良民衆-永正五年東大寺火災を防災面から読む-」(海老澤衷先生の還暦を祝う会編『懸樋抄』2008)を発表。これは本研究課題のひとつである中世後期東大寺史を扱ったものである。
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