本研究は、戦後における部落問題のありようを、部落問題を主題として戦後に製作・上映された映画作品を用いて明らかにした。取りあげた作品は、「破戒」、「人間みな兄弟」、「橋のない川」、「人間の街」、「家族」である。それぞれの映画をめぐって展開された論争や批判のなかに、部落解放運動や同和行政などをとりまく矛盾が投影されており、大衆的基盤をもつ映画を取りあげることで、これまでの運動史や政策史では見えなかった問題を浮き彫りにすることが可能となる。被差別部落の自画像と他者像の相克に視点を当てながら、1945年から現在までを見通して論じた。
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