研究課題
本研究の目的は、漢方腹診書と鍼灸流儀書の書誌的分析による、日本腹診史の構築である。腹診は、腹部を触診して病気の全体像を把握する日本独自の診断法だが、歴史的経緯は不明であった。そこで、本年度は腹診図の変化に着目して腹診史を俯瞰した。加えて本年度は、史料の恒久的な保存および研究者への情報提供を容易にすべく、史料の高画質デジタルデータ化を実施した。またオントロジーによる概念解析系も確立した。現存最古の腹診図は、薬治用の腹状図7点と鍼治用の腹位図1点から成る1550年頃の『今川義元伝書』の挿図である。腹状図は、腹状と処方を1対1で図示しており、処方数分の図を要する。腹位図は、施鍼部位の区画を示した一枚の図である。1600年前後に鍼治用の腹位図は流行したが、薬治用の腹状図の使用は消滅した。その後1640年頃、朝山更斎らが鍼治用の腹状図を創案し、久野玄越は腹位図を薬治用に改修した。1700年頃には、北山友松子が薬治用の腹状図を復活させ、1750年以降からは吉益東洞系の医家による薬治用の腹状図が主流となった。1810~30年頃、増加しつづける腹状図の相互関係を一目瞭然とすべく、桃井安貞と車井某は薬治用の腹状図の腹位図化を遂行した。東井某は、衰退傾向の薬治用の腹位図の腹状図化も行った。これらの研究の過程で、我が国独自の鍼の流儀である小児鍼は、襲廷賢『万病回春』の青筋の三稜鍼による刺絡、薛己『保嬰撮要』の丹毒の磁器片による切開が、直接的な淵源であることを見出し、「日本小児鍼史料文献目録」も作成した。
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医道の日本
巻: 70巻・1号 ページ: 214-221
巻: 70巻・2号 ページ: 186-196
漢方と最新治療
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鍼灸OSAKA
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日本医史学雑誌
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