課題研究初年度の今年度は、次の諸点を中心に調査研究をすすめた。(1)過去の古代道路に関する研究成果の掌握、(2)古代山陽道推定地域の地名や地割を記載した地積図の収集、(3)古代道路の実態的考古学的調査、(4)推定地域の現地調査。(1)については、既刊の書籍や報告書さらには論文を収集し、古代道路とりわけ官道・駅家にかかわる地名、地割りなどの景観の特徴などについての知見を得るとともに一部については現地調査をおこなった。(2)については、県内の法務局において明治期から大正期に作成された地積図の閲覧ならびに複写をおになった。しかし、国立大学法人化にともなう調査上の制約や、法務局における公図のコンピュータ入力による閲覧制限などもあり、竹原・三原・福山各支局については部分調査にとどまった。しかし尾道支局蔵の地積図調査などによって、御調川沿いについては基本的な地名の掌握と地割りを確認し、道路痕跡などを検出した。(3)については福岡県や徳島県での出土事例や実際に調査中の事例を確認するとともに、神辺平野域について考古学的な遺跡分布調査を実施し、備後国の東に連続する備中国西部についても、考古学的な遺跡分布調査活動を通じて、古代山陽道ルートの実態の解明を図った。その結果、いずれの地域の場合も古代山陽道筋は大化前代の遣跡分布とおおむね重なるが、道路建設計画の基本が最短かつ直線性の志向という点ならびに地形的な制約のためか、古墳等の地上構築物などとの関連でみると、必ずしも一致するというものでもないことが確認できた。(4)については、主として御調川沿いについて現地の資料館学芸員と踏査し、古代切り通しの可能性のある地形などを確認した。
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