本研究の目的は、近世近代における開墾の様相を瀬戸内海および中国山地を対象として明らかにすることである。本年度は主に地租改正史料を中心に開墾関連史料の収集を行った。具体的には、山口県文書館において西中国山地の西端に位置する奥山代宰判の農民経済に関する塩田家文書、各種の周防国の小村帳・小村絵図、広島大学附属図書館において安芸・備後国、周防国および出雲国の郡村レベルの耕地面積関係史料などを調査した。また島根県雲南市の田部家において、たたら関係史料のみならず、山林と耕地に関する古文書の調査を行い、さらに引き続いて備後国旧恵蘇郡奥門田村の栗本家文書の調査・整理を実施している。 これらの史料の分析は未だ十全ではないが、瀬戸内海地域の島嶼部では山林を潰して田畑に開墾していく様相がうかがえるが、今後はその開発の論理について考察する予定である。また中国山地では山林の持っ固有の役割が大きく、農民的開墾は平坦部に限られることが知られるが、その開墾は予想以上にさかんであったことなどがうかがえる。次年度の課題として村落共同体と開墾の関係についての言及が求められる。 また今年度は特殊な開墾の事例として、標高800メートルの山上を開発するという一大プロジェクトを紹介したが、この1830年代の開墾がいかに困難であったか、あるいは周辺村落との関わりのなかで明らかにした。
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