峠三吉資料については日記及び書簡の電子画像を、既に完成済の資料目録と統合し、資料画像目録として整理する作業を進め、予定より完成は遅れているが、来年度には完成の目途が立った。但し、日記、書簡については個人情報の問題が絡むので、研究成果として一般公開することは困難であり、画像つき目録を広島大学文書館など信頼できる機関に寄託し、研究者の用に供することも検討中である。また、原民喜資料についても自筆資料に関して同様の作業を進めたが、資料目録の整理に手間取り、進捗度合いははかばかしくない。 これと並行して、海外での同様の試みについて情報を収集する一環として、「西部戦線異状なし」で知られる作家エーリッヒ・レマルクの資料を収集・保存するドイツ・オスナブリュック市のエーリッヒ・レマルク平和センターを訪問し、戦争文学資料の保存、目録作成、電子画像化の実態について情報を収集した。同時にオスナブリュック大学を訪れ、文学、歴史学研究者と空爆により市街の大半を失った同市の戦争被害にかかわる文書史資料の保存と電子化について意見を交換した。 これに加えて、原爆により多くの死者を出した旧広島一中の生存者、遺族の手記集である『ゆうかりの友』の原資料を含む原民喜の甥、原邦彦の関連資料目録を完成し、『「ゆうかりの友」関連原邦彦資料目録』として刊行した。資料の電子画像化は完了し、現在画像目録の編集中である。 具体的な研究成果ではないが、定年退職後の研究代表者の本研究を神戸大学の宇野田尚哉氏に引き継いでいただけることとなった。
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