研究概要 |
本研究では,環境史の試みの一つとして,地域の暮らしのありようが,林野利用とその植生のあり方,さらには動物相にどう現れているかを,近世社会の歴史的段階において具体的に検証することを目的とする。以下,本年度の研究実施計画の項目にそって実施状況を記す。 1.中国地域,各藩・幕領の林野管理方式の調査と検討 (1)松江藩領・萩藩領について,萩藩領については動物相も含めて『防長風土注進案』の分析を先行させた。松江藩は下記2.参照。幕領については対比のため岐阜県歴史資料館での調査を行った。 (2)瀬戸内海沿岸地域については,これまで着手できなかった近世播磨・摂津関係の調査を行うことにし,神戸市立中央図書館・兵庫県公館県政資料館等での調査を行った。 2.林野の利用形態および植生についての調査と研究 (1)松江藩領については,田部家文書の調査について雲南市事業とは別に本研究目的にそった調査を行うことができたのでこれに集中し,また奥出雲町の旧横田町史編纂資料の調査も行った。 (2)鳥取藩領について,先に収集した近藤家文書検討のため米子市立図書館で関係資料を調査した。 3.地域の動物相についての調査と研究 (1)中国山地における動物相では,上記1.(1),2.(1)であわせて調査・検討を行った。また,第3回シシ垣サミットを広島県呉市で開催し,研究成果を市民に報告することもできた。 4.3年間の研究成果をまとめる 地域の暮らしと林野植生・動物相との関係について,シシ垣を切り口に総合的な研究成果の一例として,広島藩領の事例を提示することができた(後掲研究発表参照)。
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