研究課題/領域番号 |
20520586
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
市村 高男 高知大学, 教育研究部・総合科学系, 教授 (80294817)
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研究分担者 |
佐藤 亜聖 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (40321947)
福島 金治 愛知学院大学, 文学部, 教授 (70319177)
桃崎 祐輔 福岡大学, 人文学部, 教授 (60323218)
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キーワード | 御影石 / 石造物 / 分布調査 / 石材識別 / 石材流通 |
研究概要 |
22年度は、花崗岩石造物が高い密度で分布する福岡県北部と高知県西部で研究会を実施し、石造物の流通という視点から、これらの地域の歴史的特質や中四国・九州で占める位置を明らかにした。 昨年度の山口県の研究会では、県南部にかなりの花崗岩石造物があり、その石材は御影石(六甲花崗岩)のほか地元産花崗岩・産地不明花崗岩も含まれることを確認した。海峡を挟んで対岸の北部九州でも、かなりの花崗岩石造物があり、その主要な作例の数々を実見・検討した結果、この地域の花崗岩石造物の多くは御影石製であり、博多を中心に高い密度で分布することが判明した。また、博多周辺には、石灰岩・安山岩・砂岩など多様な石材で造られた石造物や、中国から搬入された薩摩塔など宋風石造物も存在し、博多の国際港湾としてとしての位置を再確認することとなった。 高知県西部の花崗岩石造物の研究会では、この地域に残る石造物のかなりの部分が御影石であり、少なくとも14世紀代のものの大半は六甲からの直接搬入品であることを確認した。しかし、この地域でも15世紀になると、地元の砂岩を使った御影石製石造物の模造品が造られはじめ、15世紀末以降には、地元砂岩製の小形の石造物のほか、砂岩製一石五輪塔、御影石一石五輪塔などが増大し(石造物の大量生産による小型化)、さらに16世紀半ば以降は、一石五輪塔も地元砂岩製で地域色豊かなものになることなど、技術の伝播と定着・変容のプロセスも明らかにすることができた。 この二地域のうち、北部九州は港湾都市博多を中心とする流通網の中でもたらされたもので、一方の高知県西部は、豊後水道と土佐沖の二つの海路が交わる海運の要衝であり、同時に石造物の技術・文化の空白地であったことが、御影石製石造物の大量搬入を可能にした土壌であることが判明した。
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