研究概要 |
本研究は、2006年に国宝指定を受けた「尚家文書」(琉球国王家=尚家関係および琉球王府関係文書を含む文書群。総数1,166点)を史料学的に分析することを通して、近世琉球の国家と社会の特質の解明を主な目的とする。具体的には近世の琉球国家の特質は主に対中国との冊封・朝貢関係の再検討から、そして琉球社会の特質は近世琉球固有の士族と百姓身分の二大区分制の再検討を「尚家文書」を活用することによって分析することにある。 本年度は、「尚家文書」中の冊封関係文書を中心に検討を加えた。特に、琉球国王の冊封時における冠船貿易(評価貿易とも)に関する文書の全体的特徴の把握をまず行い、ついで個別的に「大清道光十八年戊戌八月より翌亥十月迄評価方日記」(第87号)の分析を行った。また、本文書と関係する「道光十八年戊戌冠船二付評価方日記四」(台湾大学蔵)との比較を行い、両文書の共通点と差異について検討した。特に後者の文書では、冠船の来航前の琉球側の準備状況や中国側から搬入される貿易品の内、琉球側が不要とする商品、琉球側が購入可能な商品リストなどが明記されており、それらの点で「尚家文書」とは異なる点が判明した。 また、「尚家文書」との比較のため、「比嘉家文書」(那覇市歴史博物館蔵)のマイクロフィルム撮影を行い、史料収集を行った。「比嘉家文書」は家譜や「覚」などの一紙文書から構成されており、現存する「尚家文書」ではそれらが欠けており、古文書学的な比較が可能であることが判明した。
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