研究の第1次年度(平成20年度)は、予定通り、本研究の基礎作業である大阪市立大学所蔵奥三郎兵衛家文書の調査・複製作製を中心に作業をすすめ、目録調査と必要な複写をほぼ終了した。特に、大阪と東京の間で交わされた豊富な書簡類の存在が確認でき、遠隔地にまたがる豪農問屋商人家のあり方を明らかにする素材としての同史料の重要性が明らかになった。また、調査を通じて、大阪市立大学以外に若干の文書が存在することが判明したため、次年度以降に調査を加えることとした。私文書である奥家文書と東京都公文書館所蔵の公文書を同時に検討することによって、明治初期の典型的な豪農問屋商人である奥三郎兵衛の活動と奥家のあり方を立体的・複眼的に考察するという本研究の特徴から、東京都公文書館所蔵資料の調査にも着手し、そのうちの一部について、史料翻刻を行い分析を加えた。また、奥家の活動する江戸-東京の社会の社会的結合の特徴を明らかにする補助的作業として、都市の仲間結合について、女髪結を素材としてジェンダー視点からの考察をおこなった。
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