今年度は、当初計画した通り、藍の特産地である徳島の大藍師・三木家の肥料仕入れ・販売についての調査を実施し、明治初年までは、ほぼ撮影を完了した。また阿波撫養の廻船問屋山西家の調査も行った。これについては徳島大学がすでにマイクロ化していることがわかり、その協力で必要な写真版やフィルムを借用してデジタル化し、一部解読しエクセルでデータ化した。在地の小規模肥料商・高原村池北屋文書については解読・データ化が8割程度完了した。さらに近江の肥料商小島家文書が滋賀大学近江商人資料館に寄託されたので、一部撮影を行った。また瀬戸内海の綿作地域として播磨の調査を実施して、飾磨・高島家文書、相生・浜本家文書を調査した。飾磨・高島家文書については、論文「幕末における干鰯仲買と地域市場」(『東洋大学人間科学総合研究所紀要』10号)に幕末期の仲買商の経営実態を分析した。いっぽう論文「幕末維新期の畿内先進地域の肥料商(1)」(『東洋大学文学部紀要』62集史学科篇33号)では、摂津尼崎の肥料商梶屋の幕末維新期の仕入れを中心とした経営分析を行い、兵庫・大坂からの仕入れの実態を明らかにした。これについては今年度に小売り過程の分析を発表する予定である。播磨地域の調査意外に進んだため、関東地域の分析は今回は見送って次年度以降の課題とした。
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