(1)Aさんからの聞き取りを深め、Aさんと水商売との深いかかわり、その家族関係をふくむライフ・ヒストリーがより詳細にあきらかになった。Aさんの比較的親しい友人のなかに、売春宿の女主人や、売春宿へ女性を斡旋している男性が存在することがわかった。また、Aさんの故郷、本部での親戚関係についての聞き取りを得た。さらに、Aさんはその母親の借金ゆえにホステス業をせざるをえなくなったこと、できればホステス以外の商売をしたかったと思っていることも明らかになった。Aさんの長女も以前ホステスをしており、そのことをAさんはあまり好ましく思っていないことも明らかとなった。 (2)Aさんのライフ・ヒストリーの第二弾をまとめる予定であったが、はたせなかった。その理由の第一は、2010年4月に別の研究テーマで単著(『近代日本社会と公娼制度-民衆史と国際関係史の視点から-』吉川弘文館)を出版したため、その校正に追われたこと、第二の理由は、2009年12月の母の急逝とその後の父の入院に多くの時間を割かれたためである。しかし、2010年度にはまとめられると思う。 (3)元ホステスのBさんの姪、友人から引き続き聞き取りを行なった。認知症であったBさんは、2009年7月、息を引き取った。しかし、その死亡に至る経緯も含めて、Bさんの姪から、Bさんについてのより多くの情報をえることができ、かつアメリカ在住のBさんの同僚、Bさんを雇っていたバーの経営者の息子を紹介してもらった。経営者の息子の話からは、1950年代から20年以上にわたり、1つのバーに勤めていたホステスと経営者家族との親しい関係性を伺うことができた。 (4)バー以外の商店(化粧品店、質屋、洋裁店など)や、琉球銀行などの金融関係者からの聞き取りをさらに行ない、コザ市の商店の発展と米軍基地との関係についての一層の情報を得た。
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