(1)引き続き元ホステスのAさんの聞き取りをすすめた。2月末、3月末、7月末、9月はじめに本人と会ったが、日を追うごとにAさんの体調が悪くなり、入退院を繰り返した。7月末に全身の痛みを訴えて入院した後、9月初めに病院で会ったのが最後であった。その2日後、Aさんは亡くなった。その後、Aさんの娘、孫、アメリカから一次帰国したAさんの妹などからの聞き取りを継続している。Aさん自身の語りと重なる話が多く、Aさんの話の信憑性を確認するとともに、Aさん本人の語らなかった新たな事実をも発見している。 (2)現段階でのAさんのライフ・ヒストリーの第二弾をまとめる予定であったが、Aさん自身の死亡などもあり、考慮すべき事情が生じたため、今回も果たせなかったが、その準備はかなりすすめた。一方、沖縄におけるホステスの生活史をまとめる前提として、売買春を研究対象にする際の私自身のスタンスをまとめた論文「戦後日本の性「労働」-売買春をめぐる権力関係と社会的背景-」を書いた(藤原千沙・山田和代編著『労働再審第3巻女性と労働』大月書店、2011年1月刊行、に所収)。ここでは、沖縄ではなく、戦後の内地における労働省婦人少年局による売買春調査・神奈川県婦人更生相談所における身上調査書などの資料を使用し、1950年代前半の売買春の実態に迫るとともに、なぜライフ・ヒストリーに接近することが重要なのかを示唆した。 (3)2009年に7月末に亡くなった元ホステスBさんの姪やその友人たちから引き続き聞き取りを行なった。その上で、Bさんのライフ・ヒストリーを執筆する準備をすすめた。 (4)沖縄市史編集担当からの依頼で婦人会長や村会議員などからの聞き取りもすすめ、コザ市の社会・政治における水商売の位置についてさらに理解を深めた。
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