本研究は、中近世日本における軍神(いさがみ)信仰とその図像をめぐる歴史図像学的研究である。 13世紀に誕生した和製の地蔵菩薩=勝軍地蔵は、日本独自の国家・国土観念を背景に、中世武家政権から庶民にまで広く信仰され、その後の近代戦争や国民国家の成立・展開にも少なからぬ影響を与えた軍神であった。 本研究は、800年間にわたる勝軍地蔵信仰とその図像の歴史的展開の解明を目的とする。列島各地に膨大に現存する勝軍地蔵像についてはじめて悉皆的調査・収集を行ない、データベース化をほどこし、合わせて関連史料・文献の網羅的把握を進める。 これにより、(1)13世紀の勝軍地蔵信仰の生成から、(2)14世紀の地蔵信仰・地蔵縁起の増産、(3)16 世紀の愛宕信仰の伝播、(4)18世紀初頭の防火神としての流布、(5)近代戦争における戦勝の神としての再浮上まで、800年間の足跡を詳細に論証してゆくことになる。
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