今年度は、19世紀前半、特に1840年代の日本にオランダ船が持ち渡った誂物(=注文品)に焦点を絞り、その輸入実態(品目名・種類・数量・原産地等)を日本・オランダ両側の貿易史料を照合しながら解明し、国際的商品流通ならびに長崎を起点とする国内流通とその文化的影響について調査研究をおこなった。その手段として、日本側史料としては、主に長崎歴史文化博物館の史料を調査検討し、オランダ側史料としては、東京大学史料編纂所に所蔵されているオランダ国立中央文書館所蔵史料のマイクロフィルム(写真版)を中心に調査検討した。その過程で特に力を入れたことは、今後の誂物研究の基礎的データとなるように、従来の報告者の誂物に関する研究成果と今回の成果を合わせる形で、享和3年(1803)〜弘化4年(1847)のオランダ船輸入の誂物の用語に関して、A4判110頁におよぶ蘭日対照表(abc順)と日蘭対照表(あいうえお順)を作成したことである。これらの表は、現在予定している来年度の研究成果、ならびに報告者のいままでの誂物および日蘭貿易に関する研究成果とあわせて、来年度著書としてまとめ刊行する予定である。 さらに今年度は、誂物にも使用されていた更紗をめぐって、九州天草に残る更紗を現地調査し、その多くがヨーロッパ更紗であったことを確認した。また、19世紀前半のオランダ船の更紗輸入の傾向をまとめ、「インド更紗からヨーロッパ更紗へ-江戸時代後期のオランダ船更紗輸入-」と題して発表した。
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