今年度は、昨年度の研究成果をもとに、19世紀前半にオランダ船が日本に持ち渡った誂物(=注文品)に焦点を絞り、日蘭両側貿易史料を照合しながら解明を進めた。 はじめに、昨年度よりまとめてきた享和3年(1803)~弘化4年(1847)のオランダ船輸入誂物の用語に関する蘭日対照表(abc順)と日蘭対照表(あいうえお順)を完成させ、さらに報告者がいままでに発表してきたオランダ船の誂物輸入および日蘭貿易に関する研究に加筆修正をおこない、1冊の著書にまとめた(『日蘭貿易の構造と展開』吉川弘文館、平成21年)。本書は3部構成からなっているが、第1部「近世後期の日蘭貿易」の第5章「高島秋帆の洋式砲輸入とその影響」、および、第2部「近世後期の蘭船誂物輸入」・第3部「誂物の基礎的研究」では、今回の研究課題である近世におけるオランダ船の誂物輸入を扱った。 その後、オランダ船の誂物輸入に関する研究を継続・発展すべく、誂物の内、特に近世後期における将軍の誂物である御用御誂物に焦点を絞って考察をおこない、日蘭貿易における御用御読誂物の位置付けを試みるために「近世後期におけるオランダ船の御用御誂物輸入について」(『鶴見大学紀要』第47号第4部、平成22年)を報告した。考察の結果、日蘭双方にとって御用御誂物は、幕末になるに従って本方貿易用の荷物よりも重要視されてきていることが判明した。また、その過程でオランダ側が日本側の要求に何とか応えようとする姿勢がみてとれ、それは、オランダ側の日本貿易を介しての対日交流継続に対する強い姿勢のあらわれと読み取った。
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