研究課題/領域番号 |
20520600
|
研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
松田 京子 南山大学, 人文学部, 准教授 (20283707)
|
キーワード | 台湾先住民(台湾原住民) / 植民地台湾 / 伝統文化 / 尾崎秀真 / 佐藤文一 / 日本美術史 / 高砂義勇隊 / 霧社事件 |
研究概要 |
植民地台湾において圧倒的なマイノリティであった台湾先住民に焦点をあて、近代日本の植民地統治のあり方の推移と、それが植民地社会および日本「内地」の社会意識のあり方に与えた影響を、日本「帝国」の形成期から崩壊期までというタイムスパンの中で考察するという目的を達成するため、本年度はまず、前年度からの継続課題である「霧社事件」(1930年)について、追加的な資料調査とフィールドワークを実施した。さらに研究を1937年から1945年の総力戦期に進めていったが、その過程で「霧社事件」以降の台湾先住民社会の変化について改めて考察することの重要性を痛感した。そこで1930年代の台湾先住民社会について、特に日常生活と「伝統文化」の変容という観点から考察を行い、次の4点を明らかにした。 1.霧社事件以降、植民地政府による台湾先住民政策は、「生活改善」の名のもと、台湾先住民の生活の細部まで規律・訓練化しようとする「蕃地」の「内地化」政策が中心となったこと。 2.その結果、台湾先住民社会は大きな変容を被ることとなるが、そのような中で台湾先住民の「伝統文化」を保護しようとする動きが、尾崎秀真、佐藤文一をはじめとした在台日本人の中から生じること。 3.そのような「伝統文化」保護の動きは、植民地台湾でのツーリズムの展開とも深い関係をもつこと。 4.植民地台湾における台湾先住民の「伝統文化」保護の動向は、同時期の日本「内地」における日本美術史、日本文化史研究にも一定の影響を与えたこと。 以上の研究成果は、日本台湾学会関西部会研究大会などで発表するとともに論文としてまとめた。 さらに台湾先住民を対象とした軍事動員である「高砂義勇隊」についても資料収集とその分析を進め、その結果、日本政府による人的動員の全体像と南支・南洋政策の関連についても考察を発展させている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題を達成するために、植民地下の台湾先住民政策史にそって、5つの時期区分を行い考察を進めているが、第1期~第2期に関しては、設定した課題の考察をほぼ完了している。第3期についても、残された一つの課題に関して、現在執筆中の論文を書き上げれば完了となる。また総力戦期(第4期)については、資料の収集およびその分析を90%近く達成できており、現在、論文執筆の構想を固めている。また戦後の展望(第5期)について、資料収集とその分析は50%以上できており、2012年度末まで考察を終え、本課題全体の結論を出すことができると考えられるため、現時点で当初の研究計画を、おおむね順調に進めることができていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度である2012年度は、現在執筆中の論文を完成させるとともに、総力戦期について、日本政府による人的動員の全体像と南支・南洋政策の関連をも含めて、さらに考察を深めていく。論文執筆の構想をより良いものにするために、学会等で研究成果を積極的に発表し、そこでの議論も踏まえて、最終的には論文として公刊する予定である。また戦後の展望については、追加の資料収集と分析を秋頃までに終え、その考察を進めるとともに、論文としてまとめていく。今年末を目処に、本課題全体の結論を出し、できれば一書としてまとめ、著書として公刊したいと考えている。
|