北海道立文書館において、札幌県庁文書のうち医療・衛生関係の簿書の調査を進め、札幌県がアイヌ民族に対して医療・衛生面において実施していた施策について史料を収集した。また、農商務省北海道事業管理局文書を調査し、アイヌ関係史料の所在状況の把握を進め、千島アイヌの状況などに関する史料を収集した。 帯広市百年記念館において、十勝地方で最初の団体移住として知られる晩成社幹部の渡辺勝とその妻カネの日記を調査し、札幌県期におけるアイヌ民族の飢餓発生、それに対する札幌県や晩成社の対応などのほか、雇用・物品のやり取りなどより日常的なアイヌ民族の生活の様子についても情報を収集した。 移住者や旅行者による当該期北海道の見聞に関する史料を得ること、北海道における勧業政策の特色を比較考察する素材を得ることなどを目的として、明治初期の山形県と徳島県を対象に史料調査をおこなった。 以上の作業に加え、昨年度までの調査成果にも基づき、史料の分析をおこない、札幌県管内である日高、胆振、十勝地方における飢餓の発生、その原因、勧農に特化した札幌県の対応策の立案と実施過程、アイヌ民族の対応などについて、考察を進めた。このうち、当該期の十勝地方におけるアイヌ政策について、論文作成作業を進めたが、年度内には公表に至らず、次年度に持ち越した。 根室県については前年度に引き続き、同県のアイヌ政策関係史料の抄録である『根室県旧土人』(北海道大学附属図書館所蔵)の翻刻をし、内容の分析を進めた。
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