今年度は、川島忠之助資料の整理と撮影をおこない、書簡の筆耕を一部実施した。 川島忠之助資料は、在仏時代に撮影した本人の肖像写真や、同僚や知人から受領した写真など計51点と、明治22年1月から明治28年帰国直前まで川島がリオン出張所から横浜正金銀行関係者や外国人にあてて発信した複写式の書簡帳(copy letter)2冊、ボンベイ支店時代の複写式書簡帳1冊、その他横浜正金銀行の辞令など計9点である。 これらの資料について中性紙容器などを用いた保存処置をおこなうとともに、目録を作成した。書簡帳については書簡ごとの細目次を作成した。次に資料をデジタルカメラにより撮影して、画像のプリントを実施し、閲覧や筆耕の際に用いた。 書簡帳の一部を筆耕し、それにより得た知見は次のとおりである。 川島の書簡は、私的または半公的な内容であるが、横浜正金銀行頭取や取締役などにあてたものがほとんどであり、本支店間の公用書簡では伝えきれないヨーロッパの政治経済状況、貿易や銀行の状況などについての詳細な報告が含まれている。正金銀行の在外勤務行員にはこのような外国の情報を取得して本国へ送付することも重要な任務の一つであったことが分かるとともに、後に評価されるような横浜正金銀行の海外情勢に関する高度な調査能力の根源が、創立まもない在外支店の活動にまでさかのぼることができることが判明した。 次年度は、書簡の筆耕を継続し、その分析をすすめていく予定である。
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