今年度は、国東半島域から周防灘沿岸部で、重点的に調査を実施した。あわせて、時宗寺院の永福寺(別府市)の所蔵記録類の調査も行った。永福寺の調査では、江戸時代に親鸞聖人像を安置したことが確認された。これは、宗派を基本とした視点で捉えられる事象ではなく、むしろ中世に垣間見られる、重層した形での阿弥陀信仰の一例として注目される。 あるいは、今年度は浄土真宗寺院の什物について、赤外線撮影とともに、平尾良光氏(別府大学教授)に依頼して、蛍光X線による顔料分析を行った。このうち、善教寺(真宗大谷派・佐伯市)の「開基仏」とされる阿弥陀如来像については、使用された顔料から、14世紀代の製作と位置づけられた。この成果は、昨年度の美術史学からの調査と共通するものであった。このような顔料分析は、親鸞聖人絵伝で実施すると、使用顔料の変遷を知ることができると推測され、今後の重要な課題と考える。 なお、これまでの一連の調査成果をふまえ、大分県立歴史博物館で企画展「念仏-「こころの安穏」をもとめて-」(平成23年12月8日~平成24年1月16日)を開催した。年度末には報告書を刊行した。
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