本研究は、10世紀アッバース朝の書記官僚社会と文書行政について、両者の関連性に着目しながら、その全体像を明らかにしようとする実証研究である。この時期の代表的な書記であるアブー・イスハーク・サービーが残した膨大な文書群のあり方を写本調査によって継続的に明らかにするとともに、アブー・イスハークと同時代の書記官僚達が残した、他の文書群や文学、歴史学、倫理学など多岐にわたる著作を分析することによって、両者の関連を明らかにする。これによってアッバース朝の書記官僚社会と文書行政の関係性を分析し、当時の書記官僚が形成した相互規定的な文化や行政技術、規範意識などを明らかにし、ひいてはアッバース朝行政のあり方を解明しようとするものである。
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