(1)本研究は、朝鮮古代史研究における基本文献の一つである『三国遺事』を、総合的に調査・研究することを目的とする。研究は国内外に所蔵されている諸版本の調査と『三国遺事』本文の校訂・史料批判、および収録されている各記事の内容分析から構成される。 (2)具体的には、まず『三国遺事』諸版本の書誌学的調査を実施する。日本・韓国に現存する古刊本・中宗7年刊本(壬申本)を可能な限り実地調査し、古刊本・壬申本が持つ諸特徴を総合的に把握する。そのうえで諸版本の先後関係を確定することを目指す。 (3)次に、版本調査を踏まえ、『三国遺事』各巻の校訂と史料批判を行い、その成果を校訂・訳注校本として公表する。 (4)最後に、以上の版本調査、校訂・史料批判を踏まえ、『三国遺事』各記事の史料的性格の分析を行う。その際の基本的視点は、『三国遺事』を高麗時代の歴史的編纂物として改めて位置づけなおし、その性格を再吟味することである。高麗時代の史料として『三国遺事』を再評価することによって、はじめて古代史史料としての可能性を理解することができ、また、それを通して、『三国遺事』を東アジア古代史研究に広く活用し得るテキストとして確立することが可能となるであろう。本研究ではこの点に留意しながら各記事の分析を行う。
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