本研究は、清朝という一つの帝国の崩壊から中華人民共和国というもう一つの帝国(多民族国家)の枠組みの形成までの間に、民族集団がいかに融合集散したかを辛亥革命以後の八旗集団の人々の足跡を追うことによって明らかにしようとするものである。最終年度に当たる平成22年度においては、まず補足的な海外調査を行った。前期6月には中国の内モンゴル自治区中西部のトメド左翼旗において庄頭と呼ばれる清代旗人の子孫に対して調査を実施し、合わせて関連遺跡や文書の調査収集を行った。8月には内モンゴル東北部フルンボイル地域でダウールやエベンキ、バルガなど八旗に編成されていた人々の子孫の現代的生活形態を調べた。2011年3月には遼寧省文書館において数少ない辛亥革命の英雄として歌われてきたバルガ出身のモンゴル旗人鮑華南について史料調査を行った。こうした調査においては中国やモンゴルの関連研究者との学術交流も行ってきた。 22年度には海外や日本国内で数次にわたる研究発表および講演を行って、研究成果を公表してきた。現在これらの研究成果をさらに詳細にまとめて、きちんとした形で公開することを目指しているところである。
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