本研究目的の直接的な背景には、竹島(独島)や尖閣列島(魚釣台)の例にみられるように、近年、海底資源や漁業資源などの開発をめぐり、無人島を含む島嶼の領有権が国際的な問題になっていることがある。本研究では、19世紀から20世紀にかけての国境線画定時に、これらの島嶼の帰属がどのように扱われたのかを考察するための事例研究をおこなう。 本年度は、イギリス東インド会社文書やイギリス議会文書を整理、考察した。東インド会社「マカッサル商館文書」を翻刻し、論文を発表した。また、東南アジアの国境線の問題は、1942~45年の日本占領期に顕現化したことから、関連する「戦記もの」の資料調査をおこない、フィリピン関係1300点余の文献目録を作成した。 あわせて、研究分担者になっている「一九一二〇世紀転換期における「戦争ロマン」の表象についての比較文化史的研究」(平成21~23年度、基盤研究(B)、研究代表者:京都大学人文科学研究所山室信一教授)で、理論的な考察をおこない、マクロな視点とミクロな視点の両方から考察を進めた。
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