本年度の研究課題は、1-清代食糧暴動を禁圧・処罰する専門的刑罰法規の究明、及びその制定、2-清代刑事裁判における裁判手続きの究明、3-裁判を通じた食糧暴動参加者の社会的諸関係・心性の解明であった。 これらの課題を解明するべく、日本国内の関連する研究機関・図書館で中国法史制関係の一次資料を調査収集するともに、中国北京市の文書館・図書館での裁判関係史料の調査研究をすすめた。史料調査により入手した史料は、作者・年月日・地方・内容等でデータベースを作成し、データベースに基づいて研究に使用可能な案件を一覧化した。次いで、一覧から食糧暴動の主犯者に対していかなる刑罰が科せられたのかを考察した。 档案史料(非編纂の文書史料)に残された案件の大半は、死刑を科せられた重大な案件が大半を占めていることが判明した。死刑案件で最も多く適用される刑法上の条文を追跡すると、刑法典である『大清律例』軍律激変良民の光棍条例であることが分かり、光棍条例が清代雍正〜道光年間(18〜19世紀前半)の重大な食糧暴動の主犯を専門的に罰する法規であると比定した。档案史料の判読と分析を進める中で、地方と中央における刑事裁判手続きの基本的手続きについても、大まかな見通しを獲得することができた。逮捕拘束された食糧暴動の主犯が裁判の過程で拷問を受けながら自白した供述調書が科刑決定にさいして最も重要であることが理解できた。供述調書は食糧暴動の参加者の社会的諸関係・心性を解明する上で、この上なく貴重な記録であることも認識できた。次年度も、引き続き、研究課題1-3の解明を進める。
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