昨年度に引き続き、本年度の研究課題は、1-清代食糧暴動を禁圧・処罰する専門的刑罰法規の究明、及びその制定、2-清代刑事裁判における裁判手続きの究明、3-裁判を通じた食糧暴動参加者の社会的諸関係・心性の解明であった。 研究課題1・2に関しては博士学位申請論文『明清搶糧搶米研究』第7章「清代搶糧搶米と刑罰」において、昨年度の成果を論文化した。乾隆~道光年間において、食糧暴動を禁圧する刑罰は光棍条例に依拠した斬立決であることを確定した。また乾隆13(1748)年、光棍条例には、主犯者の首を斬首後に食糧暴動発生地にさらす規定が付加され、食糧暴動に対する刑罰が厳罰化されたことも明らかにできた。 研究課題3に関しては、博士学位申請論文第5章「清代雍正・乾隆年間における搶糧搶米の行動論理」において、梢案史料より食糧暴動時の宣伝物である「単子」、地方官庁に対する要請文である「帖子」の存在を確認し、「単子」と「帖子」の内容を分析した。その結果、民衆に食糧暴動への参加を呼びかける情報は、「単子」の文字情報の転写と内容の口頭伝聞により拡散していったこと、「帖子」の作成者は主として生員であり、作成者は「帖子」の作成と官庁への上程は公事であり、不法行為ではないと認識しており、この点は官長も作成者と同様な認識であったこと、及び「帖子」作成者の動機は手数料等の成功報酬の獲得、名声の向上にあったこと等を解明できた。
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