研究課題
本研究は、マンジュ(満洲)人皇帝が君臨し大清を国号として名乗る王朝を、最後の中華王朝「清朝」としてではなく、ユーラシア東方の広域・複合国家「大清帝国」として捉え、その支配体制の根幹をなす八旗制に焦点を当てて、八旗制、ひいては帝国全体の国制を解明しようとするものである。2年目に当たる本平成21年度は、主たる史料所蔵機関である中国第一歴史档案館(北京)の史料公開状況が好転していないこと、また支配構造について論じる機会に恵まれたことなどのために、前年度に引き続いて、新規史料調査よりも現時点での八旗制・帝国国制に関する私見の総合・提示を中心に進めることとした。すなわち、八旗制は階層組織体系・旗王制(一族分封・領主制)・左右翼制・親衛隊制によって特色づけられる中央ユーラシア国家的体制をその本質としており、これによって支えられる大清帝国の政治秩序は、権力の中核たる皇帝に向かう求心性をその核心とするものであった。一方で、八旗には明快・厳格な制度体系と慣習法的な支配構造とが並存しており、また帝国全体においても、皇帝はむき出しのマンジュ的支配を行なうのではなく治下のさまざまな地域・社会から正統性を調達しており、このような多重的・複合的なしくみが、広域・多様な帝国の長期にわたる安定的統治を可能としていたということができる。このような八旗制度像・帝国像はこれまでの「清朝」像を大きく塗り替えるものであり、本年度は、この見通しを論文・概説として公表した。最終年度に当たる次年度は、その精緻化を進めるとともに、史料蒐集・事例研究と総合して、巨視的・微視的双方からの研究の完成をはかる。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (1件)
中国史学 18
ページ: 159-180
別冊環・清朝とは何か 16
ページ: 74-91,128-130,132-149,290-301
Comparative Imperiology(Matsuzato, Kimitaka(ed.))(Slavic Research Center, Hokkaido University) (Slavic Eurasian Studies No.22)
ページ: 87-108