本研究は、宋・元代の華北地方における仏教と社会との関わりの歴史的変遷について、石刻史料の蒐集と整理を中心として問題分析を行って当該研究の基礎データーを充実させ、それによって仏教界の動向を詳細に跡付けることを目的としたものである。 このような目的の達成を目指し、実施計画にしたがって、既存及び最近刊行された当該時代の石刻史料から仏教関係史料を抽出する作業を進め、その中から個別の碑刻(拓本・拓影)を取り上げ、関連分野の研究者の協力を得て詳細な検討をする研究会を、11月20日、12月18日、1月15日、2月19日と毎月一回のペースで行った(検討史料:遼・天慶5年(1115)「大遼燕京西大安山延福寺蓮花峪更改通圓通理舊庵爲觀音堂記井諸師實行録」その他)。また連携研究者である松浦とともに、11月7日から12日まで、中国・河南省において天宝宮(許昌県)・南香山寺・観音大士塔(宝豊県)・風穴寺(汝州市)・少林寺・法王寺・永泰寺・崇福宮・清涼寺(登封市)・河南省博物院(鄭州市)などの実地調査を行った。 本研究の第1の課題は基礎データーの充実であるため、現時点では史料の蒐集とその分析に終始しているが、その過程で得られた様々な事柄、例えば、これまで史料の不足ということから等閑視されていた仏教伝播の様相などを探る手掛かりが浮かび上がってきたことなどは、今後の研究の展開に有意義である。次年度も引き続きこのような活動を進め、基礎データーの充実を目指す予定である。 なお、本年度の活動が年度の後半のみであるのは、本研究の採択が10月末であったことによる。
|