本研究は、宋・元代の華北地方における仏教と社会との関わりの歴史的変遷について、石刻史料の蒐集と整理を中心として問題分析を行って当該研究の基礎データーを充実させ、それによって仏教界の動向を詳細に跡付けることを目的としたものである。 このような目的の達成を目指し、実施計画にしたがって、既存及び最近刊行された当該時代の石刻史料から仏教関係史料を抽出する作業を進め、その中から個別の碑刻(拓本・拓影)を取り上げ、関連分野の研究者の協力を得て詳細な検討をする研究会を、4月23日、5月21日、6月25日、7月16日、9月24日、10月29日、11月27日、12月17日、1月21日、2月18日と毎月一回のペースで行った(検討史料名:省略)。また連携研究者である松浦典弘・研究協力者である福島重とともに、11月13日から19日まで、中国・河北省において定州開元寺塔院・石刻館・定州市博物館(定州市)、正定開元寺・臨済寺・隆興寺・鹿泉韓庄龍泉寺(石家庄市)・〓州開元寺・天寧寺・浄土寺・平郷文廟(〓台市)、開化寺(元氏県)、柏林寺(趙県)、北岳廟・修徳寺(曲陽県)などの実地調査を行った。なお日程の初日、中国社会科学院歴史研究所において我々の研究活動について報告し意見交換を行ったが、その際、調査予定地に関する詳細な情報の提供を受けることが出来た。 本研究の第1の課題は基礎データーの充実であるため、現時点では史料の蒐集とその分析に終始しているが、その過程で得られた様々な事柄、例えば、これまで史料の不足ということから等閑視されていた仏教諸宗派の流れを知る手掛かりが浮かび上がってきたことなどは、今後の研究の展開に有意義である。次年度も引き続きこのような活動を進め、基礎データーの充実を目指す予定である。
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