本研究は、宋・元代の華北地方における仏教と社会との関わりの歴史的変遷について、石刻史料の蒐集と整理を中心として問題分析を行って当該研究の基礎データーを充実させ、それによって仏教界の動向を詳細に跡付けることを目的としたものである。 このような目的の達成を目指し、実施計画にしたがって、当該時代の石刻史料から仏教関係史料を抽出する作業を進め、その中から個別の碑刻を取り上げ、詳細な検討をする研究会をほぼ毎月一回のペースで行った(日程・検討史料名:省略)。この間、研究代表者は11月12日から11月16日まで、中国山西省において、交城県の玄中寺・円明禅寺遺跡、平遥県の慈雲寺・慈相寺の実地調査を行った。 一方、本年度が最終年度であることから、これまでに研究会で検討してきた碑刻の録文に解題と註を付し史料集として纏める作業にも着手した。その結果、27碑を載録する史料集が成り、桂華淳祥編「金元代石刻史料集-華北地域仏教関係碑刻(一)-」(大谷大学真宗総合研究所紀要28 2011.3)として公開した。この史料集は、本研究の目的の一つであった基礎データーの充実を果たしたものであり、従来の研究では史料が乏しいことからいまだ十分な歴史事象が把握されず空白の時代として扱われてきた当該時期華北仏教界の実態を究明するための貴重な史料となるとともに、これからの中国仏教史研究の更なる展開にも寄与するものと確信する。
|