平成20年度は以下のような研究を行った。1)日本国内においては、国立国会図書館、早稲田大学図書館、東洋文庫、内閣文庫などに赴き、資料の調査収集を行った。これまでに入手できた『華夷変態』、『通航一覧』、『長崎実録』、『唐船進港回棹録』、『長崎奉行所判決記録-犯科帳』、『清国漂流図』などの諸資料をもとに、長崎に来航した清代ジャンク(唐船)商人に関するデータを集約した。2)海外では、中国の北京市と上海市において資料の調査収集を行った。北京では中国第一歴史档案館が最も重要な調査先とし、外交類と財政類文書を中心に、官商と民商の海外進出ならびに清朝の海防政策(海上交通管理制度)、税関収入に関する史料を収集し一部を複写した。上海では復旦大学図書館と上海図書館に赴き、江南地方の地方志資料を閲覧・複写した。3)2008年9月上海・復旦大学が主催した「江南與中外交流」国際学術討論会に出席し、「日本漂流民眼中的清代乍浦港」と題した研究報告を行い、江戸時代の漂流史料と『乍浦県志』、『平湖志』、『浙江通志』などの中国語史料と照合し、中国側の記録では言及が少ない清代唯一の対日貿易港である乍浦港の実態について検証した。なお、発表論文は『江南與與中外交流』(《復旦史學輯刊》第三輯、鄒振環編)に収録され、2009年7月復旦大学出版社より刊行される予定である。 研究分担者伍躍は、論文「外交的理念与外交的現実--以朱元璋対“不征国"朝鮮的政策為中心--」において、明朝初年の対外政策の実態、とりわけ対高麗・朝鮮外交を材料に検討を加え、その朝貢制度の形成と運用を明らかにした。
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