本研究は、18世紀ドイツの農村地域を対象に、国家による啓蒙主義的政策に対して、農村住民がいかに対応したかを調査することにあった。そもそも、19世紀前半期の封建制廃止の時期まで、農村住民は独自の伝統文化を保持し、生活していた。啓蒙主義的国家政策は、農村住民の文化、とりわけ彼らの信仰やその表出形態としての巡礼や祭り、風習を「迷信」とみなし、それを矯正することを試みた。国家はキリスト教会と手をたずさえて、民衆文化の破壊を強行しようとした。 しかし、農村住民の伝統的宗教文化が、国家や教会の法令等によって、すぐさま矯正されたわけではなかった。本研究は、こういった農村住民の「上から」の圧力に対しての抵抗、恭順などさまざまな反応を探った。 本年度は、まず、昨年度に引き続いて資料の収集をおこなった。資料は文献資料と手稿資料に分類される。前者は、物品費により、古書店や図書館で調達した。後者の手稿資料は、現地の文書館に赴いて、撮影、コピー等で入手した。本年度も昨年度同様、ドイツ・バイエルン州のシュローベンハウゼン市立文書館、アウクスブルク司教区文書館を中心に収集作業をおこなった。 昨年度、すでに論文1本と著書1冊を書き、ある程度の文章化の作業をおこなった。今年度も著書1冊(共著)を上梓することになっている。
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