研究概要 |
平成22年度については、「メディアおよび国民世論の動向」について調査を進めた。ここで収集したのは、主として雑誌記事(一般時事評論誌および専門誌)と各種新聞記事である。 雑誌については、Spectator,New Statesman,New Societyなどイギリスを代表する時事評論誌に発表された論考を中心に収集した。また、新聞記事は、The Times,Guardian,Observerについて収集を行なったが、大衆新聞の事例として収集を考えていたSunday Expressについては、まだ収集を終えられていない結果となった。これらは、いわゆるマス・メディアであり、直接に国民世論の声を反映したものとは言えないが、注意深く読み解くことによって、世論の動向を把握することのできる史料であることをまず確認した。そして、全体的な傾向としては、高級紙とその読者においては、セクシャル・マイノリティに対して寛容な傾向を確認することができたといえる。今後、大衆紙であるSunday Express記事収集を進め、高級紙とは異なる傾向がどの程度みられるのかを探る作業を進めることが残された課題となっている。 また、戦後の時代的特徴をより的確に理解するべく、戦前におけるセクシャル・マイノリティに対するイギリス社会の態度変容の把握する作業を並行して行い、その成果となる研究論文「私的自由の境界:戦間期イギリスにおける同性愛犯罪法改正論議(中)」『埼玉大学紀要.教養学部』46,1(2010),p.1-30を発表した。 なお、22年度は、中間報告としての口頭発表を行う研究計画を立てていたが、これについては準備不足のために実現できなかった。これまでの調査分析の総合化を急ぎ、23年度の課題としたい。
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