1967年の性犯罪法改革以降1990年代までの戦後イギリス社会において、男性同性愛者というセクシャル・マイノリティの受容・承認は進展した。しかし、その過程は戦後イギリス社会の多文化化という社会変容の過程におとなしく収まる一側面というわけではなかった。宗教的視点から検討してみると、イギリス国内における多様なセクシュアリティの許容・承認は、増大する非キリスト教移民や新たな原理主義的キリスト教信仰に受け入れられたわけではなかった。また、法制面での1967年以降の改革をみてみると、イギリスの政治文化のヨーロッパへの統合(司法の統合)が進むことで、イギリス国内のセクシャル・マイノリティの多様性が確保されていったことも明らかになった。
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