研究課題
本研究プロジェクトの第2年目にあたる平成21年度は、前年度に構築した研究基盤をもとに、本格的な調査・史料分析を行なった。研究の具体的な活動と成果は、以下の4項目に集約できる。(1)前年度の、史料分析及びデータベース化作業を継続し、研究第一段階(経路研究)をほぼ完了した。(2)10・11世紀における改革派修道士、聖職者の移動件数、所属・地位、移動理由の調査を行なった(とくに教皇シルヴェステル2世の動向を中心に)。(3)10・11世紀におけるローマ巡礼の動向と、アルプス以北の聖俗高位者のローマ訪問の件数と目的に関する調査に着手した(エルサレム巡礼および巡礼者の帰国後の行動との比較的観点から)。(4)前年度の移動経路のデータベース化とともに、(2)(3)の分析結果のデータベース化に着手した。これらの研究課題の遂行にあたって、夏期にアルプス圏への海外出張を行ない、アルプス圏の移動経路上にある修道院および都市を訪問し、現地文書館や図書館において関連史料を調査し、研究文献の収集にあたった。今年度はとくに、サン・ゴダール峠、トリノからプロヴァンスへ抜けるルート(タンド線)を中心に調査を進めた。これらの研究活動をもとに、紀元千年における教皇シルヴェステル2世(ジェルベール・ドリャク)の自己形成と経歴(アルプス越えを中心に)、当時の修道院・教会改革運動や神聖ローマ皇帝権、カペー朝王権との関わり、さらには紀元千年の学問知の転回や新たな知の伝播との関係を論じる研究論文を執筆した(2010年上半期に東京大学出版会より刊行予定)。
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中世の都市-史料の魅力、日本とヨーロッパ(東京大学出版会)
ページ: 269(123-152, 243-252)
国民国家と市民-包摂と排除の諸相(山川出版社)
ページ: 301(14-39)