本研究の目的は、14世紀末から15世紀のフィレンツェ領域の法的多元性に特に目を向け、その多元性を容認するシステムと、支配の実態とを分析することにある。これは、応募者が継続的に研究している中世末期イタリアの都市社会における人的ネットワークとその政治的・社会的機能の解明から発展したものである。研究にあたっては、支配都市であるフィレンツェと、これに従属した都市に焦点を当て、フィレンツェの支配下における都市社会の支配的階層の対応あるいは変化を解明しようとしている。特にピサとアレッツォについてフィレンツェ支配の影響と在地社会の対応を探るべく、フィレンツェ国立文書館、アレッツォ国立文書館、ピサ国立文書館で史料を調査し、イタリアの実証的な地方史をより大きなヨーロッパ中世史の議論に結びつけることに努めている。
|