本プロジェクトの最終年度にあたる本年度は、昨年度までに調査した研究状況をふまえて、関連する研究領域(近世ヨーロッパ政治史・政治思想史、近世ポーランド文化史・政治史・思想史など)について補足的な調査と文献の収集をおこなった。また、収集した研究文献の内容を把握・整理し、基本的な史料の読解を進めた。結果的に、本プロジェクトの研究成果報告書は、以下のような内容から構成されることになった。 1) 近世ポーランド・リトアニアにおける「自由」概念をめぐる研究状況の整理 a. 西洋政治思想史における「2つの自由」論との関連から b. 近世ポーランド政治文化研究における「市民社会」論と「自由」概念 2) 「真の自由」とはなにか-16世紀のポーランド・リトアニアにおける「白由」論の展開 3) 近世的「自由」から近代的「自由」へ-17・18世紀における「自由」概念の変容 本研究の第1の意義は、貴族共和制期のポーランド・リトアニアにおける「自由」観の特質とその変遷の過程を史料に即して具体的に明らかにすることにあったが、そのような作業をつうじて、ポーランド・リトアニアにおける「自由」論の展開をヨーロッパ政治思想史の全体の流れのなかに位置づけるための基礎的な知見が得られた点も、本プロジェクトの成果の1つであると考える。
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