研究課題
10世紀から13世紀までの海に関する生業(漁業、運搬、交易、軍事等)の総体的把握を通して、イングランド中世史の再検討を行なうという研究の目的を実現するために、四つの柱、1,環境と技術、2。社会、3、権利関係、4.市場と交易の柱を建てて研究を進めた。中世イングランドの魚に関するデータ・ベースに関しては、夏の現地調査でイングランド西部での鮭のみならずピルチャード漁の研究の必要性を認識した。研究内容は以下のようにまとめることができる。紀元1000年ころの気候の温暖化のなか、南東部イングランドの海民集団が組織化され、海上交通網が整備された。それに伴い、鰊や塩などの物資、銀貨などの財貨、貨幣製造人に代表される職人や商人の移動が活性化された。防腐剤としての塩の生産のための塩田の発達、浮き網、巨大な浅瀬の梁群の構築といった漁獲方法が発展し、その結果、北西ヨーロッパで初めて市場向けの鰊漁とその安定した海上輸送が可能となったのである。船団を組む鰊漁の展開は、英仏海峡域に富をもたらし、新たな海上輸送力と軍事力の進展を促した。ノルマンディのフェカン修道院がイングランドの海岸都市を所領としたことはこの文脈で捕らえることができる。「海」をめぐる情報は格段と豊かになりノルマン征服のために大軍輸送が可能となったのである。以上の内容は、2011年6月24日韓国のChonjyu大学で開催された第20回韓国ブリテン史学会での招待講演The Beginning of the empire in medieval Britainという論文と2012年2月17日台南南栄技術学院で開催された2012年異文化交流国際学術研討(ママ)会での報告論文Herrings and Powers in medieval Englandに結実した。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
歴史学研究
巻: 891 ページ: 40-46
The Haskins Society Journal Japan
巻: Suppplement(1) ページ: 1-26
kanadelibrary.org/