本研究の目的は広島・長崎で収集された被爆資料が、米国政府によって冷戦政策の中でどのように利用され、いかなる核時代が作られていったのかを、近年公開された資料や広島・長崎の被爆者や核実験被ばく者の証言の分析によって浮き彫りにすることである。 今年度は、2013年7月に米国テキサス医療センター図書館と米国国立公文書館を調査し、ABCCや米原子力委員会に関連する資料調査を行った。また、米議会図書館にて、米原子力委員会ニューヨーク作戦本部で、世界に広がる放射性降下物の調査に中心となって携わっていた、メリル・アイゼンバッド所長所蔵のビキニ水爆被災関連の写真を入手することができた。これらの写真や文書資料に基づいて、1953年から始まる米原子力委員会による世界に広がる放射性降下物の調査プロジェクト・サンシャインについて詳細な分析を行うことができた。 また2014年2月28日には広島大学原爆放射線医科学研究所主催の研究会「マーシャル諸島核実験によるマグロ漁船員の被曝」に本科研が共催し、米原子力委員会の「プロジェクト・サンシャイン計画」について、研究報告をすることができた。 核による人体への影響研究の研究史は、とりわけ内部被曝や残留放射線の問題については、充分に研究されているとはいえない。そうした中、日本科学者会議編『国際原子力ムラ』にて、「第1章 アメリカの核開発と放射線人体影響研究―マンハッタン計画・アメリカ原子力委員会・ABCC」にて、本科研における研究成果をかなり反映させることができた。また、米国での資料調査でも、本科研での研究を裏付ける新資料・写真をかなり入手することができた。また『エコクリティシズムレビュー』に特別寄稿論文として掲載された。
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