研究課題/領域番号 |
20520655
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
朝治 啓三 関西大学, 文学部, 教授 (70151024)
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研究分担者 |
渡辺 節夫 青山学院大学, 文学部, 教授 (70036060)
加藤 玄 日本女子大学, 文学部, 准教授 (00431883)
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キーワード | アンジュー帝国 / プランタジネット家 / カペー家 / 諸侯 / ガスコーニュ / 封建制 / 帰属心 / アングロ・ノルマン王国 |
研究概要 |
朝治が論文「シモン・ド・モンフォールのガスコーニュ統治」において、プランタジネット家によるガスコーニュ領有方針と、ガスコーニュ・セネシャルであるシモン・ド・モンフォールによる統治策とを比較し、この二つが全く異なることを史料に基づいて実証した。従来の教科書的説明では、イングランド王国が大陸に植民地を有し、そこの土地と人民を支配収奪したのに対して、フランス国王がガスコーニュ奪回を目指してイングランド国王と戦ったという図式が見られた。朝治論文は現地の領主や都市政府のプランタジネット家への帰属心が、カペー家への帰属心を上回っていたことを実例を挙げて述べ、この地が植民地などではないことを結論した。この結論はマルコム・ヴェイルの想定する英仏関係の構図と軌を一にするものであり、中世英仏関係史研究の新しい方向を示している。加藤の「バスティード」論文はガスコーニュ現地領主による新都市建設の歴史的意義を実証した。渡辺の騎士や封建制に関する二編の論文は、王国形成における王権と意義と同時に、封建制の積極的意義を認め、封建領主による現地支配の重要性を説いた。これら三者の論考は、本研究が志向する欧米の新しい研究動向を反映した英仏関係史を描くという方針を、実現したものである。中村敦子の12世紀チェスター伯領に関する詳細な研究は、ノルマン征服という歴史的事件を一過性の衝撃とは見なさず、ノルマン王家とその封臣たちとによるイングランド封建国家建設の開始点を見なす、アングロ・ノルマン王国論の基礎的研究である。一方、横井川はガスコーニュの現地領主の帰属心を上訴事例を詳細に調べることによって調査し、花房はノルマンディー現地領主の対力ペー王家関係を調査し一面的な従属関係ではなかったことを突き止めた。さらに上田は14,15世紀のブルボン公による現地支配がフランス王国の国制において占める役割について新解釈を打ち出した。
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