本研究の学術上の目的は、近世石造物について、種類を超えて横断的に比較し、地域的な文化圏を再構成することにある。具体的には江戸後期の南関東地方において地域的な信仰を集めた安産講である「手児奈講」とその講が造立した「手児奈講碑」を取り上げ、まず、資料集成し、その普及過程を明らかにするとともに、道標や、寺院に寄進された灯籠などの石造物といった多様な石造物データから復元した当時の日常的交流圏の中で位置づけ、江戸後期における土着信仰の一般化の過程を明らかにすることを目的としている。研究第二年目にあたる本年度は、最近まで、手児奈講が活動していた流山市青田新田地区などで聞取り調査を行った。また、手児奈講の実態把握につとめるため、手児奈霊堂を祀る市川市真間地区で、各地からの参詣の様子などを聞取り調査した。また、手児奈講分布地域において、自治体レベルの石造物所在調査が行われている場合はそれらを利用しながら、他の石造遺物データの集積と時空間データの抽出について昨年度あらかじめ購入したGISによる分析を22年度にかけて行なっている。 また、研究の中間報告として第6回風景フォーラムにおいて江戸川を通じた信仰の普及状況について報告した。
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